当事者意識を育てる7つの方法

/ 職場の家庭教師

1.当事者意識とは

当事者意識をもって欲しい・・・

「うちの従業員は自分のことばかりを考えている」「本人の意識がね・・・」 「もうちょっと当事者意識をもって欲しい」 このような声はよく耳にします。例えば、こんな感じでしょうか。

あなたは経営者。業績を伸ばさないとまずいと、危機感を持っている。従業員を見たときに、まるで他人事のよう・・・。給与や残業のことばかり気にしている。新規事業に打って出たいが、今の従業員に任せられるような気がしない。最低限の仕事しかしないからだ。別にサボっているわけではない。人間もいい奴らばかり。ただ、新しいことに挑むには、任せられない。会社をこうしたらいいというアイデアを上げてくれる人材もいない。そう、当事者意識が感じられない。

当事者意識とは何か?

当事者意識とは、辞書にはこうあります。

自分自身が、その事柄に直接関係すると分かっていること。関係者であるという自覚。(デジタル大辞泉/小学館)

ここで重要なのは、当事者意識は『自覚しているか否か』ということです。『気づいているか?気づいていないか?』なのです。決して、手を抜いているから当事者意識がないわけでもなく、会社なんてどうでもいいと思っているから当事者意識がないわけでもありません。ただ、気づいていないのです。

責任感がないのとは別

当事者意識がないから、責任感がないというわけではありません。当事者意識はないが、言われた仕事は責任を持ってやり切る方はいますよね。辞書には、責任感についてはこう記されています。

自分の仕事や行為についての責任を果たそうとする気持ち。(デジタル大辞泉/小学館)

責任感は『気持ちの有無』です。『気持ちがあるか?ないか?』なので、当事者意識とは別のものです。

2.当事者意識がない

従業員に当事者意識がないといっても、大きく分けると3つのケースがあります。一つは、先に書いたように自覚していない(気づいていない)ケース。二つ目は、思考力や想像力が不足しているケース。三つ目は、被害者意識が出ているケースです。ひとつずつ見てみましょう。

自覚していないケース

繰り返しになりますが、当事者意識は『気づいているか否か』です。やる気の問題とは切り離して考えます。自覚していないので、伝えればいいということになりますが、伝え方に注意です。適当に伝えて、納得できないのでは効果はありません。伝える人を変えたり、丁寧に段階を踏んで伝えるじっくり対話をするようにしたら、ガラッと働き方が変わったケースもあります。「誰が、どう伝えるか」が大切です。

思考力や想像力が不足しているケース

自覚していないという点では一つ目と同じです。違いは、思考力や想像力が不足しているため自覚できないという点です。当事者意識を持って、自己変革できる人材は全体の数%しかないという話を聞いたことがあります。これは能力的な課題があるからです。また思考・想像には、ある程度の知識量と経験値が必要となります。

思考力や想像力が不足していると、自分の置かれている状況を認知できません、理解できません、思考できません、考えうる次の手を想像できません、これまでにない新しいことを創造するのは困難です。

とはいえ、職場における当事者意識。そこまで高度な思考力を求められているわけではないでしょう。まずは、自分の仕事を振り返り、考える習慣です。そこでの気づく経験が重要です。このように思考力を鍛えることが、結果として当事者意識につながっているのです。

被害者意識があるケース

三つ目は、不満や嫌悪感があるため拒否をしているケースです。気づいてはいるが納得がいかないので、他人事であるかのような態度を表す。もしくは、考えようとしない。反発する。そのような状態です。

「そんな奴は組織にいても害しかない!」「どうぞ、お引き取りください!」という方もいらっしゃいます。そうそう社員を解雇できませんし、人手不足の職場では仕事ができる人材を手放すことは痛手です。また、そういう方に限って、仕事はよく出来たりします。自分の仕事は責任を持ってやりきります。ただ、会社として、チームとして動くときに協力的でない印象が強いので、マネジャーの頭を悩ませるのです。

ただ、こういった方ほど仲間にできると心強い存在になります。こちら側の意図を汲み取ってくれる存在になると、非常に組織は強くなります。対応は、人対人の関係性づくりが80%です。表面的な関わりや言葉は、全て見透かされます。具体的な手法は後ほどご紹介するとしましょう。

当事者意識がないのは本人だけの問題か?

ここで考えていただきたいのは、 「当事者意識がないのは本人だけの問題か?」です。わたしの答えはNO。なぜなら、当事者意識は、 環境や状況に起因することが多いからです。

例えば、新人の育成で考えてみましょう。 新人のため、目の前の仕事を覚えるので必死です。 もし、ついた指導係が 「まずは、わたしの言うことだけやって入ればいい」 というスタンスだったらどうなるでしょうか? もし、新人が感じていることや、 思ったことを発言する機会がなかったら、 どうなると思いますか? 徐々に、自ら考えなくなります。 「言われたことだけやっていこう」 という受け身の姿勢になっていきます。

新人は、”良かれと思って”、 言われたことだけやるようになります。 指導係も、仕事を覚えるまでは、 考えや意見を答えさせる必要がないと思い、 “良かれと思って”、教えることに意識が向きます。 そして、新人が仕事を覚えたころ・・・ 指導係はボヤくのです。 「○○さんね、仕事は覚えたんだけど、 自分で考えて動こうという気がないんだよね・・・」

3.当事者意識を削ぐ上司の言動

なぜ、他人事になるのか?

他人事になる理由は一つではありませんが、ここではたった一つに絞ってみましょう。それは、『情報不足』です。仕事であれば、その業務について詳しくない。業界について、会社について、上司について、同僚について、商品について、顧客について、情報が不足しているから他人事になるのです。情報と情熱は比例関係です。人は詳しくなると、興味や関心を持ち、想いが生まれるものです。情報を継続的に与える取り組み(勉強会など)には、当事者意識を育てる効果があるのはそのためです。

当事者意識を削ぐのはカンタン

「発言の機会を与えず、意見を求めない」「言われたことだけやるように支持する」「こちらの意図や考えは伝えず、最低限の支持で済ませる」といったことをしていくことで、当事者意識を削ぐことができます。情報を遮断して、目の前のことだけを意識させると、単純労働化するため、改善欲がなくなります。視野が狭くなり、当事者意識は簡単に削がれるのです。そして、被害者意識に繋がります。

4.当事者意識を育てる7つの方法

①関係の質を高める

教育のスタートラインは、関係性を構築することです。考えてみてください、上司のことを信頼していない人が、当事者意識を持って仕事をするでしょうか。信頼されていない人を、導くことは不可能なのです。仲良くなれというわけではありません。笑顔で挨拶する、声をかける、気にかける、話を聞く、認める、丁寧に話すなど、こういった一つひとつの関わりで、関係の質は高まるものです。

②期待感を伝える

占い師するのは予言ですが、リーダーがするのは期待です。「期待しているよ」の一言が、当事者意識を引き出します。「期待をされることがストレスになって、潰してしまうのでは?」という声もありますが、それは別の問題です。仕事の任せ方が誤っているだけで、期待しない方がいいというわけではないのです。適切に期待感を伝えることは、当事者意識を持たせることに繋がります。

③目的・目標を持たせる

明確にすべきは、「何のために、何を目指すのか?」だけです。「何をするのか?」だけでは、当事者意識を持つことはできません。「何のために、何を目指し、そのために何をするのか?」ということを分からないままでは、仕事はただの作業になりかねません。目的・目標を明確に示しましょう。

④発言の機会をつくる

始業時や終業時、ミーティングなどの場で、「何を考え、何を感じているのか」を話せる場を作るといいでしょう。「特に大した意見も出ないのでは?」と思われるかもしれませんが、意見の内容はさほど重要ではありません。自分の考えや意見を発言するという行為自体に意味があります。ここで重要なのは、話しやすい雰囲気と聞く姿勢です。初めのうちは、こちらから質問をして引き出してあげるといいでしょう。

⑤仕事を振り返る機会をつくる

上記の『発言の機会をつくる』に関連した項目です。「1ヶ月(1週間)を振り返って、良かったことは何か?」「もし、やり直せるならどうするか?」といった質問を通して、振り返ってもらいます。コツとしては、いきなり口頭で聞くのではなく、紙に書いてもらってから話してもらうことです。自己を振り返り、言葉にすることが苦手な人もいるからです。

⑥失敗や間違いを許す

私たちが完璧でないように、すべての人が完璧でありません。失敗もしますし、間違いをすることもあるでしょう。同じ失敗を繰り返すことを許せという話ではありません。失敗を恐れて、行動しなくなることは避けたいところです。ある程度の失敗や間違いを許容し、次に繋げる教育風土が、当事者意識を育てることに繋がります。

⑦認める、ねぎらう

認め、ねぎらう文化のある職場の従業員は、当事者意識が高いです。何より、その職場や一緒に働いている人が好きです。指示・命令で動く管理型の職場ではなく、共感・支援で動く協働型の職場なのです。協働型の職場には、お互いを認め、ねぎらう文化があります。自然と『みんなのために、会社のために、お客さんのために』という発想になるのです。

4.最後に

「もうちょっと当事者意識をもって欲しい」という相談を受けて、実際に改善活動をしていくと、どれぐらいの期間で変化が起きると思いますか?なんと早いケースだと、2時間の研修中に変化が起き始めます。これは驚くべきことではありません。先にも書いたように、当事者意識は『気づいているか?気づいていないか?』なのです。気づけば一瞬、気づくまでに多少時間がかかるだけです。あなたの職場がより良くなることを願っております。